
ドイツ・イギリス・フランスの規制と日本の現在地を比較分析
動物福祉の向上は世界共通のテーマである。欧州を中心に、動物の入手経路の透明性を高める法制度が次々と整備されている。本稿では、ドイツ・イギリス・フランスの制度を具体的に比較し、日本が今後参考にできる点を考察する。各国のスコアは世界データマップで確認できる。
ドイツでは、動物を迎える際の主な経路として、保護施設「ティアハイム(Tierheim)」からの譲渡と、登録されたブリーダーからの直接購入が広く定着している。特にティアハイムは社会インフラとして機能しており、動物と飼い主のマッチングに重点を置いた仕組みが特徴的である。
ドイツ全土に約550のティアハイムが存在し、年間約50万頭の動物を保護している。ティアハイムは単なる保護施設ではなく、動物の医療ケア、行動矯正、そして適切な飼い主とのマッチングまでを一貫して行う社会インフラとして機能している。その実態と構造的課題についてはティアハイムの光と影で詳しく分析している。譲渡の際には飼育環境の事前審査が行われ、譲渡後のフォローアップも実施される。
2020年4月、イギリスで「ルーシー法(Lucy's Law)」が施行された。この法律は、動物の入手経路の透明性を高めることを目的とし、子犬・子猫を迎える際には認定ブリーダーまたは保護施設から直接迎えることを義務付けたものである。法律名の由来となった「ルーシー」は、劣悪な環境で飼育されていたキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの名前である。
ルーシー法の施行により、イギリスで犬猫を迎えるには、認定ブリーダーから直接購入するか、保護施設から譲り受けるかの二択となった。この法律は、繁殖業者の透明性を高め、消費者が動物の出自を確認できる仕組みを制度的に保障するものである。
フランスでは2021年に動物福祉に関する法律が成立し、2024年1月から段階的な規制強化が始まった。動物を迎える際の情報提供の義務化や、オンライン取引の透明性向上など、動物と飼い主のより良い出会いを促進する制度設計が進んでいる。
日本では2019年の改正動物愛護管理法により、マイクロチップの装着義務化や数値規制(飼養施設の広さ等の基準)が導入され、動物福祉の向上に向けた歩みが進んでいる。日本の犬猫殺処分の現在地で分析したとおり、2024年度の殺処分数は6,830頭まで減少した。ペット関連市場規模は1兆9,108億円に達し、これほど多くの人が動物との暮らしを望んでいる中、保護犬猫という選択肢の認知度向上が今後の鍵となる。
国立国会図書館の調査レポートによれば、日本の動物愛護法は改正のたびに規制を強化してきた。今後は、動物を迎える際の飼い主教育の充実や、保護犬猫の譲渡促進など、動物と人がより良い形で出会える環境づくりが期待されている。
あと6%の人が保護施設から動物を迎えることを選べば、アメリカのシェルターでの殺処分はゼロになる。
— Best Friends Animal Society, 2024
Shelter Animals Countの2022年の調査によると、Z世代とミレニアル世代は、今後3〜5年以内に犬猫を迎える際に「購入」ではなく「譲渡・里親」を選ぶ意向が、全体平均の約2倍であった。この世代間の意識変化は、日本でも同様の傾向が見られ始めている。AnyMallのようなプラットフォームを通じて保護犬猫の情報にアクセスしやすくなることは、この変化を加速させる可能性がある。
欧州の事例が示すのは、動物福祉の向上には「制度」と「文化」の両輪が必要だということである。ドイツのティアハイムは一朝一夕に築かれたものではなく、社会全体の動物に対する意識の成熟とともに発展してきた。日本においても、法制度の整備と並行して、データに基づいた正確な情報発信を通じて社会の意識を変えていくことが求められている。

記事監修
獣医師 / 株式会社Buddies CEO
東京大学農学部獣医学専修卒。臨床獣医師・ペット栄養学講師。タイ・ベトナムでの獣医ボランティア、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローを経て、保護犬の犬材派遣会社・株式会社Buddiesを設立。女性起業チャレンジ大賞グランプリ受賞。NHK『おはよう日本』出演。
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