
全国の動物愛護センターのデータから見る保護犬猫の「その後」
保護犬猫の問題を語る際、「殺処分数」に注目が集まりがちである。日本の犬猫殺処分の現在地で分析したとおり、2024年度の殺処分数は6,830頭まで減少した。しかし、その数字の背後には、全国の動物愛護センターで日々行われている保護・収容・譲渡の営みがある。本稿では、保護施設のデータを分析し、譲渡の現状と可能性を探る。都道府県別の詳細は日本データマップで確認できる。
2023年度、全国の動物愛護センター等に引き取られた犬猫は44,576頭であった。このうち、飼い主への返還と新しい飼い主への譲渡を合わせた数は、犬猫全体の約80%に達している。これは10年前と比較して大幅な改善であり、各自治体の譲渡推進施策と民間団体の活動が成果を上げていることを示している。
第一の壁は「健康・行動上の課題」である。保護された動物の中には、病気や怪我を抱えている個体、あるいは人間への恐怖心から攻撃性を示す個体が含まれる。環境省の殺処分分類では、「譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)」に該当する分類1の動物が一定数存在する。
第二の壁は「収容能力の限界」である。多くの動物愛護センターは慢性的なスペース不足に悩まされており、新たな保護動物を受け入れるために、収容期間に制限を設けざるを得ない状況がある。
第三の壁は「譲渡先の確保」である。特に成犬・成猫や、特定の犬種に対する需要は限られており、子犬・子猫に比べて譲渡までの期間が長くなる傾向がある。高齢の動物や持病のある動物については、さらに譲渡のハードルが高い。
譲渡率の向上に大きく貢献しているのが、全国で活動する動物愛護ボランティアと民間保護団体である。2013年の法改正により、自治体が引取り業務の一部を動物愛護団体に委託できるようになったことで、官民連携の譲渡体制が整備されてきた。
民間団体は、行政の保護施設では対応が難しい医療ケアや行動矯正を行い、譲渡会の開催やSNSを活用した情報発信を通じて、新しい飼い主とのマッチングを促進している。しかし、その多くはボランティアベースで運営されており、資金面・人材面での持続可能性が課題となっている。
近年、テクノロジーを活用した保護犬猫の譲渡促進が注目されている。オンラインプラットフォームを通じて保護動物の情報を広く発信し、地理的な制約を超えたマッチングを可能にする取り組みが増えている。世界の動物福祉から日本を見るで紹介したドイツのティアハイムのように、テクノロジーと制度の両輪が重要である。AnyMallのようなアプリは、保護犬猫の情報へのアクセシビリティを高め、「保護犬猫を迎える」という選択肢をより身近なものにする可能性を持っている。
重要なのは、テクノロジーはあくまで手段であり、その根底にあるべきは「一頭一頭の命に向き合う」という姿勢である。データとテクノロジーを活用しながらも、動物福祉の本質を見失わない取り組みが求められている。

記事監修
獣医師 / 株式会社Buddies CEO
東京大学農学部獣医学専修卒。臨床獣医師・ペット栄養学講師。タイ・ベトナムでの獣医ボランティア、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローを経て、保護犬の犬材派遣会社・株式会社Buddiesを設立。女性起業チャレンジ大賞グランプリ受賞。NHK『おはよう日本』出演。
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